柔道整復理論
問題106 下腿コンパートメント症候群で誤っているのはどれか。
- 腫脹が著明である。
- 安静時痛がある。
- 足関節の屈曲運動ができる。
- 動脈の拍動が触知できる。
解答:1or3 (不適切問題となる可能性あり)
ジャパン国試合格の見解 解答3
まず、問題の出題の仕方が曖昧であり、困惑します。
柔道整復学(理論編)第5版p402〜403の通り、下腿コンパートメントは前方区画、外側区画、後方浅区画、後方深区画の4区画に分類されます。
設問では、そのうちどこの区画のコンパートメント症候群であるかを明確にしてありません。そのため余計に解答しづらい問題となりました。
なぜなら下腿コンパートメント症候群では他動的運動痛が発生しますが、それぞれの区画の内部の筋が伸張される方向に運動痛が現れるため、選択肢3のように「足関節運動ができるか?」と問われても、一概に痛みなくできるともできないとも言えないのです。
また、「痛みを伴っても運動はできる」と捉えることもできてしまいます。そうなるとこれが○か×かはますますわからなくなります。
続いて、選択肢1ですが、「腫脹が著明である」の「著明」という言葉が曲者です。
コンパートメント症候群は筋区画の隔壁の伸展性が少なく、その上強固なために起こる疾患といえます。その隔壁の内部は当然腫れていますから、腫脹があるか?ないか?と問われれば、当然腫脹はあります。しかし隔壁の伸展性以上の腫脹が外部には現れないからこそ、内部の組織を強く圧迫してしまうのだということもできます。
そう考えると、「腫脹が著明」という言葉をどのように解釈すれば良いのかがわかりません。
つまり、1も3も一問一答で○か?×か?と問われれば、どちらも○とも×ともいえると考えられます。そこが速報の解答が各校で割れる理由です。
ジャパン国試合格としては、このうちどちらかを選ぶとすれば、悩んだ末に3を選ぶ事としました。
理由は、下腿コンパートメント症候群が最も好発するのは前方、および外側区画であること、そして上述のように腫脹はあるものの、下腿骨の骨折ほど広範囲に著明な腫脹ではなく、区画がある部分に限局された内圧の高い腫脹であること。出題者はこれを著明という言葉で誤りの選択肢とした可能性があると読みました。
加えて教科書p403に急性期では筋伸張時の疼痛があるとの記載があることから、選択肢3を否定はできないと考えました。
しかし、これは独自の見解であり、前方区画以外のコンパートメント症候群では足関節屈曲が無痛下でできる場合もあります。そう考えると選択肢3は×となるのです。
コンパートメント症候群が起こっている区画の指定も無く、また選択肢の内容が教科書に明確に記載が無い以上、解答については問題の作成者がどのような意図でこの問題を作成したのか?に左右されます。
「不適切問題」として扱われる可能性も想定されますので、念のため採点の際には加点の対象にしない方が適切であると思われます。